1. 「寺クライシス」— 全国で進む後継者不在の現実
テレビ東京『ガイアの夜明け』2026年7月24日放送回では、「寺クライシス! 〜後継者がいない、その時〜」と題し、日本各地で進行する寺院の危機的状況が丁寧に取り上げられました。番組で紹介された主な事実は以下のとおりです。
- 全国に約7万7000ある寺院のうち、約1万7000で専任の住職が不在とされる
- 檀家減少・経営難・後継者不足を背景として、廃寺が全国で続出している
- 新潟県妙高市の長泉寺では、6年前に住職が亡くなり後継者もいないまま今年正式に宗教法人の解散手続が受理された
- 富山県富山市の東薬寺(大宝元年〔701年〕創建と伝わる古刹)では、84歳の住職が2年間後継者を探し続けている
- 長野県上田市の西光寺では、副住職が近隣の観音寺・智識寺と併せて3寺院を掛け持ちで運営し、持続可能性の確保に取り組んでいる
寺院がなくなれば、先祖代々の墓の管理、葬儀・法事の場、地域コミュニティの拠点が失われることになります。番組は、こうした危機に向き合う関係者と、そこで生まれつつある新たな動きの両面を丁寧に描いていました。
出典
テレビ東京『日経スペシャル ガイアの夜明け』2026年7月24日放送 第1226回「寺クライシス! 〜後継者がいない、その時〜」(番組公式ページ)
2. 承継が実現した後、寺院に求められる持続可能性
後継者不在の寺院にとって、まず最優先の課題は「承継を成立させること」です。しかし、承継が実現したとしても、その後の運営が檀家収入だけに依存する構造では、遠くない将来に同じ危機が再来する可能性があります。番組で紹介された西光寺の事例でも、副住職が3寺院を掛け持ちしながら、次世代に寺院をつなぐための「持続可能な運営モデル」を模索する姿が印象的でした。
承継後に検討し得る、宗教活動と両立する運営強化の方向性としては、たとえば次のようなものがあります。
- 宿坊(宿泊業)の再開・整備
- 写経・坐禅・法話などの体験プログラム
- 境内地・遊休建物を活用した文化イベント・展示
- ウェルネス/リトリートとの融合(サウナ・温浴・瞑想プログラム)
- 檀家外への信仰接点づくり(御朱印・オンライン法要)
いずれも、宗教法人法・所轄庁実務・税務上の位置づけを丁寧に整理したうえで進める必要があります。TSUGUでは、承継の相談段階から、こうした活用構想を並走して検討することを大切にしています。
3. 事例研究:大泰寺(和歌山県那智勝浦町)の宿坊サウナ
3-1. 大泰寺の概要
大泰寺(たいたいじ)は、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町に位置する古刹です。世界遺産・熊野古道からもアクセスできる立地で、寺院の一部を改修した本格的な宿坊「Temple Hotel 大泰寺」を運営しています。
3-2. 宿坊サウナ「龍蒸庵」の特徴
宿坊の目玉となっているのが、本格的な薪サウナ「龍蒸庵(りゅうじょうあん)」です。あわせて、川原に設けたアウトドアサウナも体験できるプランが提供されています。宿泊者はサウナで身体を温めた後、外気浴により心身を「ととのえる」ことができます。
特徴的なのは、単なる娯楽としてのサウナ体験にとどまらず、タブレットを用いた禅問答や坐禅、住職との対話といった宗教的な要素と組み合わせている点です。「サウナ×瞑想」を軸にした滞在プランは、寺院ならではの静けさと、現代人が求める「ととのい」を同じ時間軸のなかで提供しています。
3-3. 事業モデルの示唆
大泰寺のモデルからは、以下のような示唆が得られます。
- 宗教活動(坐禅・法話・禅問答)を軸に据え、宿泊・入浴サービスを付帯的に位置づけている
- 熊野古道・自然環境という立地資源を最大限に活用している
- 檀家収入に依存しない収益基盤を構築しながら、寺院本来の役割を維持している
- 地域外・国外からの来訪者に対して「日本の仏教文化に触れる入口」を提供している
参考情報
大泰寺の宿坊サウナ「龍蒸庵」に関する公的一次情報は、大泰寺公式サイトおよび宿坊運営各社の情報をご確認ください。本稿の記述は、一般に公開されている情報を編集部において整理したものです。
4. なぜサウナ・リトリートが寺院と親和的なのか
近年のサウナブームの背景には、単なる娯楽ではなく、「日常から離れ、心身を整えたい」というウェルネス的な需要があります。この需要は、古来より寺院が提供してきた「修行の場」「静けさの場」と共鳴する部分が大きいと考えられます。
4-1. 共通する構造
- 集中と沈静: サウナも坐禅も、外部刺激を遮断し内観を促す
- 身体性の重視: 頭で考えるのではなく、身体感覚を通じて自己と向き合う
- 非日常空間: 境内地の持つ静謐さは、リトリートの舞台として最適
- コミュニティの再構築: サウナ室での対話・法話後の茶話は、ゆるやかな共同体を生む
4-2. 慎重に扱うべき論点
一方で、サウナ・リトリート事業を寺院で展開する際には、以下の点を丁寧に整理する必要があります。
- 宗教活動が主たる目的であるという規則上の位置づけ
- 収益事業と宗教活動の区分経理(法人税法上の34業種該当性)
- 保健所・消防・建築基準法上の許認可
- 檀家・地域住民との合意形成
- 包括宗教団体(該当がある場合)との調整
5. 法令・税務上の位置づけ(収益事業と宗教活動の区分)
宗教法人が営む宿泊業・浴場業・飲食業は、法人税法上の収益事業(政令で定める34業種)に該当するため、宗教活動由来の収入とは区分経理のうえ、収益事業部分について法人税が課されます。
5-1. 実務チェックポイント
- 規則上、宗教活動と収益事業の関係が整理されているか
- 区分経理体制(会計ソフト・帳簿)が整備されているか
- 顧問税理士・所轄税務署との協議記録があるか
- 包括宗教団体への事前相談を行ったか
- 所轄庁(都道府県宗教法人所轄部局)へ、活動全体像を透明性を保って説明できるか
これらの整理は、事業を大きくしてから遡及するよりも、承継段階から並行して設計するほうが、後々のトラブルを避けるうえで有効です。
6. 承継段階から活用構想を並走させる意義
後継者が見つかっても、「継いだ後にどう寺院を維持していくか」が具体的でないと、承継自体が長続きしないケースがあります。承継段階から次のような論点を並行して整理しておくことが、寺院を次の世代へと確実につないでいくために有効です。
- 境内地・建物の現況調査と修繕計画
- 檀家・地域住民との関係の棚卸し
- 宗教活動の再構築計画(法要・祭祀・年中行事)
- 持続可能な収益源の設計(宿坊・体験プログラム・文化事業など)
- スタッフ体制・後継者の後継者計画
- 所轄庁・包括宗教団体との継続的なコミュニケーション
関連する意思決定の枠組みは 後継者不在のお寺・神社が取れる4つの選択肢、承継の全体像は 宗教法人の禅譲・承継 完全ガイド をあわせてご覧ください。
7. TSUGUができるご支援
TSUGU(ツグ)では、後継者不在の寺院・神社のご相談を、以下の観点から総合的にお手伝いしています。
- 適法な承継スキームの設計(代表役員承継・規則変更・所轄庁認証)
- 承継希望者とのマッチング(宗教者としての適格性を含む審査)
- 承継後の運営構想の伴走(宿坊事業・体験プログラム・地域連携の設計)
- 連携する行政書士・司法書士・税理士との協働
- 秘密厳守・無料でのご相談対応
「後継者がいないが、廃寺にはしたくない」「継いでくれる人はいるが、継いだ後の運営が心配」といったご相談は、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
後継者不在の寺院が「新規事業を始める」ことは所轄庁との関係で問題になりませんか?
宗教法人法上、宗教活動を主たる目的として継続していることが前提となります。宿坊事業・体験プログラムなどは、宗教活動と関連づけて位置づけ、収益事業として区分経理を行い、税務・所轄庁への説明を透明化することで実施可能です。事業内容が宗教活動を副次的な位置に追いやる規模・態様であれば、規則変更や所轄庁への事前相談が必要になります。
宿坊やサウナ事業から得た収益は非課税ですか?
宗教法人が営む宿泊業・浴場業は法人税法上の収益事業(政令で定める34業種)に該当し、収益事業として課税対象となります。宗教活動に係る収入とは区分経理を行う必要があります。詳細は税理士・所轄庁との個別協議が必要です。
承継後に新しい事業を始めるまでにどのくらいの期間が必要ですか?
代表役員承継の所轄庁認証・登記変更に3〜6ヶ月、規則変更を伴う場合はさらに3〜6ヶ月、事業立ち上げに向けた保健所・消防等の許認可取得と設備投資を含めると、通常1年〜2年程度を見込みます。承継段階で新事業の構想を明確にしておくと、所轄庁への説明もスムーズになります。
TSUGUでは、こうした新事業を伴う承継の相談にも対応していますか?
はい。TSUGUでは、承継後の持続可能な運営構想を含めたご相談にも対応しています。連携する行政書士・司法書士・税理士とともに、宗教活動の継続を前提とした上で、境内地・建物の活用を含む総合的な承継設計をお手伝いします。