1. 令和7年の調査が示した数と、その内訳

文化庁は、不活動宗教法人の状況を毎年調査しています。同庁の定義によれば、不活動宗教法人とは「宗教活動は行っていないが、法人格のみ存在していると推定される法人」です。令和7年12月31日現在で5,286法人が確認され、前年から267法人増えました。

1-1. 過去5年間の推移

基準日都道府県知事が所轄総数前年からの増減
令和3年末3,3443,34850減
令和4年末3,3253,32919減
令和5年末4,4154,4311,102増
令和6年末5,0095,019588増
令和7年末5,2775,286267増

総数のほとんどは都道府県知事が所轄する法人で、文部科学大臣が所轄するものは4法人から16法人の範囲です。令和5年末の1,102法人の増加は、法人が一斉に活動を止めた結果ではありません。後述する基準が令和5年に定められ、所轄庁の把握が進んだためだと同資料は説明しています。令和7年は670法人が把握され、403法人が整理されました。

1-2. 約9割が被包括宗教法人である

5,286法人の法人種別の内訳は、包括宗教法人が5法人(0.1パーセント)、被包括宗教法人が4,754法人(89.9パーセント)、単立宗教法人が527法人(10.0パーセント)です。活動が止まっている法人のおよそ9割が、どこかの包括宗教団体に属しています。この意味は、コラム「「手付で単立化」はできるのか」でも整理しています。

1-3. これまで示してきた数値との関係

当サイトのコラムでは、令和6年調査にもとづく「5,019法人(前年から588法人の増加)」をこれまで紹介してきました。この数値は令和6年12月31日を基準日とする当時の測定値であり、誤りではありません。令和7年の5,286法人は基準日が1年後の数値です。両方を並べると、1年で267法人増えたという変化が見えてきます。

2. 整理は403法人に増え、解散命令の請求は90件になった

総数よりも重みがあるのは「整理」の内訳です。整理とは、把握された法人の状態を、活動の再開・合併・任意解散・解散命令の請求のいずれかで決着させることです。

2-1. 過去3年間の整理の内訳

年解散命令任意解散合併その他計
令和5年8171477116
令和6年211616170223
令和7年902010283403

同資料の注記によれば、「その他」には活動再開や、調査等により不活動宗教法人でなかったと判明したものが含まれます。整理の増加は、法人が失われる方向だけを意味しません。それでも解散命令だけを追うと、2年で8法人から90法人へ増えています。同資料は「特に、不活動宗教法人の解散命令は前年比4.3倍となっている」と記しており、この倍率は当窓口の算出ではなく文化庁自身の記述です。

2-2. 請求の根拠になる条文

解散命令は所轄庁が単独で発するものではありません。宗教法人法第81条第1項は、裁判所が所轄庁、利害関係人もしくは検察官の請求により、または職権で解散を命ずることができる場合を列挙しています。通知が「不活動による解散命令事由」と呼ぶのは、このうち第2号後段から第4号までです。1年以上目的のための行為をしないこと、礼拝の施設の滅失後2年以上やむを得ない事由なく施設を備えないこと、1年以上代表役員およびその代務者を欠いていることの3つです。

3. 所轄庁が「不活動」と判断する5つの事由

ここが本題です。令和7年の調査結果には、文化庁宗務課「宗務行政の適正な遂行について(通知)」(4文宗務90号、令和5年3月31日付け)が参考資料として添付されており、その別紙が「不活動宗教法人の判断に関する基準」です。所轄庁が何をもって「不活動」と判断するかが示されています。

3-1. 基準が定められた経緯

通知は、それまで明示的な基準が存在せず、整理に至らない例が多かったことを挙げ、円滑な把握と整理のために基準を示すとしています。あわせて、不活動のおそれがあるといった曖昧な位置づけをせず、基準に当たるものは遺漏なく判断するよう求めています。

3-2. 基準に挙げられた5つの事由

基準は、次のいずれかに該当する場合に、ただちに不活動宗教法人と判断して速やかに整理に着手するよう定めています。

  1. 督促しても実在が確認できない: 第25条第4項の書類が提出されず、督促状等が不達となるなどして法人の所在地および代表役員の住所地における実在が明らかでないと判明し、電話番号等を活用しても連絡ができなかったとき
  2. 過料の対象になった翌年も書類が出ない: 書類の提出を怠ったことを理由に過料事件通知書の送付の対象となった法人から、翌年も連続して、督促にもかかわらず書類が提出されなかったとき
  3. 書類や認証の審査でそのおそれが認められる: 提出された書類の確認や規則変更等の認証の過程で事実関係を調査すべき事情があり、調査の結果、不活動による解散命令事由に該当するおそれがあると認められるとき
  4. 外部からの情報提供で同じおそれが認められる: 所轄庁が収集した資料により、または捜査機関、税務当局その他の関係機関からの情報提供等により、同じおそれがあると認められるとき
  5. 法人からの申出があり、自力で整理できない: 宗教活動を停止もしくは終了する旨、境内建物が滅失し再建の予定がない旨、または代表役員が死亡もしくは退任して不在となり代務者や後任者を置く予定がない旨の申出等があり、自ら合併・解散等による整理が困難と認められるとき

第2の事由には例外があります。書類を提出しないことについて法人から明確な理由や意思の表示があった場合は、不活動宗教法人と判断せず、提出を怠ったものとして過料の手続を行い、それ以後も継続して提出を促すとされています。連絡が取れていること自体が、判断を分けています。

3-3. 「おそれ」の段階で判断される事由がある

第3と第4の事由は、解散命令事由に「該当するおそれがあると認められるとき」と書かれています。事由が確定していなくても、不活動宗教法人という位置づけは先に付きます。そのうえで通知は、該当を確認し、認められた場合に請求手続に着手するという順序を示しています。判断と請求は別の段階です。

4. 判断の入口は、書類の提出と認証申請の審査である

5つの事由のうち、第1と第2は同じ一点から始まっています。事務所備付け書類の提出です。通知も、基準の適用にあたっては書類の提出や認証申請等の機会を有効に活用するよう所轄庁に求めています。この限られた接点が、判断の入口になっています。

4-1. 第25条第4項が求める書類と期限

宗教法人法第25条第4項は、毎会計年度終了後4月以内に、事務所に備えられた書類のうち次のものの写しを所轄庁に提出しなければならないと定めています。役員名簿、財産目録および収支計算書、境内建物に関する書類、そして同法第6条の規定による事業を行う場合はその事業に関する書類です。この制度は、所轄庁が法人の実態を継続的に把握できるようにするため平成7年の法改正で創設されたものだと通知は説明しています。

4-2. 提出を怠ったままだと何が起きるか

提出を怠った場合、宗教法人法第88条第5号により、代表役員やその代務者などが10万円以下の過料に処せられることがあります。通知は、期限を徒過しても提出が確認できない場合は督促を行うとしており、督促状が不達となれば基準の第1の事由に進みます。過料事件通知書の対象になった翌年も提出がなければ第2の事由です。過料は金銭の負担にとどまりますが、提出をしないまま年を越すと、法人そのものの存続に関わる段階へ移ってしまいます。

4-3. 規則変更の認証申請のときに確かめられること

もう一方の接点は認証申請です。通知は、規則変更の認証を審査する際に、規則の変更に関与する代表役員等が正当に選任された者であることに疑義がある場合は、その選任の手続を調査するよう求めています。主たる事務所の所在地の変更等で法人の同一性に疑義がある場合には、宗教活動や礼拝の施設の現状、代表役員等の選任経過等について十分な調査を行うとされています。代表役員の交代と規則変更を経る承継の手続そのものに関わる記述です。手続の流れは、コラム「宗教法人の代表役員承継の手続き」で整理しています。

5. 「売買に類似した取引」への注意喚起と、この基準のつながり

行政がここまで踏み込む理由も、同じ資料に書かれています。不活動宗教法人対策推進事業の説明は、活動を停止した法人を放置すると、第三者により法人格が不正に取得され「脱税やマネー・ローンダリング等の違法行為に悪用される」おそれがあると述べています。

文化庁は「宗教法人の売買に類似した取引による違法行為の助長防止に係る要請について」という要請も出しています。重要なのは、適法な承継と、法人格を対価の対象とする取引とが、行政の側で明確に区別されている点です。両者の違いは、コラム「宗教法人の「売買」はできる?」で条文に沿って整理しています。

注意

活動が止まっている法人を「手続きだけで引き継げる」と説明する勧誘には注意が必要です。基準の第3および第4の事由は、認証の審査過程や関係機関からの情報提供を端緒として判断が行われることを示しており、不自然な選任経過や所在地の変更は所轄庁の調査の対象になります。

6. 休眠が続いている法人が、今日から確かめられること

5つの事由を裏返すと、確認すべきことが見えます。いずれも、所轄庁との連絡が取れないか、書類が出ていないことを起点にしています。

  • 直近の会計年度の書類 — 終了後4月以内の提出が済んでいるかを確認します
  • 所轄庁に届いている連絡先 — 法人の所在地と代表役員の住所地が現況と合い、郵便物が届く状態かを確認します
  • 代表役員の在任 — 不在であれば代務者または後任者の選任を検討します。1年以上の欠失は解散命令事由に当たります
  • 礼拝の施設の現況 — 滅失している場合は再建の見込みを含めて整理します。滅失後2年以上の未整備も解散命令事由に当たります
  • 選任手続の記録 — 責任役員会の議事に関する書類など、選任経過を示す記録が残っているかを確認します

書類が長く止まっていて活動の再開が難しい場合でも、選べる道は残っています。通知自身が、法人から事情の申出や説明があったときは所轄庁が動向を注視し、必要に応じて相談や助言を行い、包括宗教団体との連携を促すなど適切に対応するとしています。残る選択肢は、コラム「休眠宗教法人とは」および「宗教法人の「消滅危機」時代に何ができるか」で整理しています。

ワンポイント

所轄庁が都道府県知事である法人は5,277法人で、大部分を占めています。手続の窓口は都道府県の宗教法人事務担当課であり、通知や注意喚起は文化庁の宗教法人に関するページにまとめて掲載されています。

7. TSUGU(ツグ)ができるご支援

TSUGU(ツグ)は、後継者にお悩みの宗教法人と、健全な運営を志す承継希望者との橋渡しを行う相談窓口です。書類の提出が止まっている、代表役員が不在のまま時間が経っている段階からご相談に対応しています。

ご相談では、まず現状がどの段階にあるのかを一緒に整理します。書類の提出で足りるのか、代表役員の選任から必要なのか、合併や任意解散まで検討する局面なのかによって進め方が変わります。承継の全体像については、記事末尾の関連記事とまとめ読みのご案内もあわせてご覧ください。

よくあるご質問

事務所備付け書類は、いつまでに所轄庁へ提出する必要がありますか?

宗教法人法第25条第4項は、毎会計年度終了後4月以内に、役員名簿、財産目録および収支計算書、境内建物に関する書類、同法第6条の事業を行う場合はその事業に関する書類の写しを所轄庁へ提出することを求めています。怠った場合は、同法第88条第5号により代表役員等が10万円以下の過料に処せられることがあります。

書類を提出していないと、すぐに不活動宗教法人と判断されますか?

基準の第1の事由は、督促状等が不達となるなどして法人の所在地および代表役員の住所地における実在が明らかでないと判明し、電話番号等を活用してもなお連絡ができなかったときに該当します。通知は、法人が活動している事実や連絡先が確認できたものについては、不活動宗教法人と判断せず、提出の督促や過料の手続を実施するとしています。

不活動宗教法人と判断されると、必ず解散命令が出るのですか?

通知は、不活動宗教法人と判断したものについて、宗教法人法第81条第1項第2号後段から第4号までの事由に該当するかを確認し、該当すると認められる場合に地方裁判所へ解散命令を請求するとしています。一方で、宗教活動の停止や境内建物の滅失、代表役員等の欠失について法人から申出があった場合や、合併・任意解散の準備を進めている場合には、所轄庁が動向を注視し、相談や助言を行うとも記されています。

代表役員の交代や規則変更を申請すると、かえって調査されませんか?

通知は、規則変更の認証を審査する際に、規則の変更に関与する代表役員等が正当に選任された者であることについて疑義がある場合には、その選任の手続を調査するとしています。対象になるのは疑義がある場合であり、正当な手続を経た交代が不利に扱われる趣旨ではありません。むしろ書類の提出や認証申請は、法人が現に活動していることを示す場にもなります。